無料法律相談実施中

 06-6586-9400

土日祝・夜間も対応

24時間
メール受付中

口頭での慰謝料支払い合意は有効ですか?

慰謝料請求は、裁判上の判決によって認められた場合には、そのまま放置すると罰則を科せられ、強制執行による実現が期待できることからほぼ確実に支払いを受けられます。
しかし、実際に当事者の立場に立った場合、裁判まで広げることなく当事者間の協議によって離婚を成立させ、慰謝料の取り決めを行いたいと望むのがほとんどです。

この点、当事者は、関係が破綻したとはいえ夫婦であったことから、協議中の口約束のみで取り決めてしまうことも少なくありません。
このような口頭での慰謝料の支払いの合意も法律上有効といえるのでしょうか。

口頭でも支払いの合意は有効

離婚協議時における慰謝料の支払いを締結した口頭での約束は、諾成契約として扱われます。
諾成契約とは、当事者間によって取り決めた法的権利や義務を、当事者の合意によって双方に拘束させる法律行為です。
諾成契約は、書面のみならず口頭による合意でも有効に成立します。
したがって、当事者である夫婦が、口頭の合意によって成立した支払いを認める口約束も有効に成立します。

したがって、約束した期日や合意した金額通りに支払いをしないなど、支払人の帰責事由により離婚協議時の約束を破った場合には、債務不履行の責任を負うことになります。
また、頑なに支払いを拒否する場合は、強制執行という手段によって裁判所の力を借りることで強制的に支払いを余儀なくされるおそれもあります。

書面での合意がなければ支払いを拒否できる可能性はある

口頭による合意が法律上有効とはいえ、実際にその約束が取り交わされた事実が存在していたことを立証できない限り、たとえ合意が存在したことが真実であったとしても、合意の事実は存在しないものとして扱われます。
そして、口頭の合意があったことを書面やその他の証拠なくして立証するのはとても困難であり、相手方の請求を拒否できる可能性が大きいです。

他方で、支払いの約束を裏付ける書面が存在したときは、支払いを拒否するのは難しいです。
約束があったことを裏付ける上で有効な書面としては、離婚協議書と公正証書があります。

離婚協議書がある

当事者間で合意する慰謝料や財産分与などの離婚時の取り決めや必要事項を記載し、当事者同士で作成した契約書のことです。

インターネット上で雛形も紹介されており、作成が簡単で費用が安いことから合意を裏付ける書面としてよく利用されます。
もっとも、記載内容に不備があるときは、書面全体や一部が無効となることがあります。

例えば、慰謝料請求権は、金銭債権であることから、金銭以外の形で慰謝料を求める記載をした書面は、無効となる場合があります。
離婚協議書を提示された場合、弁護士などの専門家に相談することで証拠としての有効性を否定できることもあるので、安易に合意しないことをおすすめします。

公正証書がある

当事者が公証役場に赴き、公証人が当事者の離婚の取り決めを聞いて書面化した公文書です。
作成に費用や時間がかかるものの、公証人のチェックを通すので不備のおそれもなく、高い証明力をもつ書面であることから、支払いを立証する上で強力な証拠となります。

したがって、公正証書によって支払いの合意が交わされていた場合、合意がなかったと言い逃れできず、慰謝料の支払いを拒否することはできません。
裁判所に公正証書を提出されると、迅速に強制執行が開始されることから、支払いを拒否し続ければ、財産が差し押さえられるおそれもあります。

念書や誓約書の作成があった

これらの他にも、不倫・浮気などの不貞行為を理由に慰謝料を求められている場合などに、不倫関係の解消を条件として念書や誓約書の作成を求められることがあります。
しかし、こうした念書や誓約書は、あくまで不倫関係の解消に関する書面なので、慰謝料にかかわる事実が記載されていなければ証拠とはならず、支払いを拒否できます。

また、書面以外でも当事者の協議時の一部始終を記録した録音や録画、メールやラインのメッセージなども口頭の合意があったことの裏付けとして利用できるので、口頭の合意だからといって安心できません。

安易に合意しないよう慰謝料請求されたら行うべきこと

慰謝料は、婚姻中の不倫・浮気などの不法行為を理由として請求されます。
したがって、安易に合意して支払いに応じる前に、まずは事実関係を確認し、不法行為が成立するかどうかの検討をすることになります。
例えば、不倫を原因として請求された場合、夫婦に保障されている「平穏・円満に夫婦生活をおくる権利」を侵害しない限り、不法行為は成立せず、支払いを拒むことができます。

この点、相手方との肉体関係がなければ不法行為にはならないことが原則です。
しかし、肉体関係がなかったとしても、キスや度重なるデートなどの親密な関係を形成していた場合、夫婦間の権利侵害として不法行為が成立することもあります。
また、事実上、夫婦関係が破綻していた後に肉体関係をもった場合には、平穏・円満に夫婦生活をおくる権利が観念できないことから不法行為にはなりません。

脅迫や強姦など違法行為で肉体関係を強制的にもった場合も、不法行為とはならず慰謝料の支払いを拒めます。
仮に、自分が未婚であり、既婚者と知らずに相手方と交際し、相手方の配偶者から慰謝料請求される事例も考えられます。
このような場合も、不法行為に対して故意が認定されないと責任を負わないことから、支払いを拒否できます。

次に、自分に不法行為が成立する場合でも、慰謝料の請求額が妥当かどうかを確認します。
慰謝料の算定は、被害者の精神的な苦痛により増減し、夫婦関係の継続期間、不倫・浮気などの期間・回数などの個別具体的事案に応じて決定されます。
もっとも、当事者同士での取り決めの場合、まずは相場よりも大きい金額で慰謝料を試験的に請求してくることがあります。
合意する前に、請求額が妥当かどうかを専門家に相談することをおすすめします。
また、可能な限り当事者間での話し合いによって請求額を減額できないか交渉することも大事です。

まとめ

相手方から慰謝料請求をされることは、日常的にそう多くはないことから、いざ問題に直面すれば精神的に動揺してしまうことは無理もないことです。
しかし、だからといって事実関係の確認や話し合いをせず、安易に支払いに応じる口約束をしたり、相手方が用意した書面に言われるがまま署名してしまうと、本来なら拒否することができる慰謝料まで支払うことになりかねません。
また、実際に約束したとしても支払い金額や期限、分割回数などの約束内容における食い違いが生じることもあります。
口頭での合意に応じてしまったとしても、万が一に訴訟を提起されたり、強制執行の申し立てがなされる場合に備えて、離婚協議中に自分に不利な証拠を収集されないよう注意することや、相手方から提示された書面の内容の精査を専門家にお願いし、相談することをおすすめします。