夫(または妻)が不貞行為を行っていると疑われるとき、どのようなものが裁判などでそれを立証する証拠として認めもらえるのでしょうか。また、それらの証拠を集めるのにはどのような方法があるのでしょうか?それらのことについてご説明いたします。
目次
不貞行為を立証する証拠とは
不貞行為を立証する証拠となるのはどのようなものでしょうか。不貞行為というのは「夫婦や内縁関係の男女などの一方が夫や妻以外の者と自由な意思に基づいて肉体関係を持つこと」とされますので、これを行ったことを証明する証拠ということになります。
また、立証する証拠というのは裁判で証拠として採用されやすいものということです。これまで次のようなものが裁判で証拠として採用されています。
- 写真
- 録音した音声データや録画した撮影データ
- クレジットカードの利用明細、レシート
- Suica、PASMOなどの利用履歴
- メールや手紙
- SNSやブログ
- 手帳、日記、メモ
- GPS
- 興信所や探偵の調査報告書
それでは、それぞれのものについて詳しく見て行きましょう。
写真
証拠として認められやすい写真は次のようなものです
- ①性行為の写真、それに似た行為(疑似行為)の写真、裸の写真
- ②ラブホテルや自宅への出入りしている写真(入るところ、出るところの両方が必要)
- ③不倫・浮気相手との旅行などの写真
- ④一夜を共にしたとわかるような写真(ホテル、旅館などでの写真)
これらのものは、裁判になった場合に不貞行為があったという証拠として認められやすいものと言えます。ただし、不貞行為があったと認められるためには、次のようなポイントがあります。
- 撮影された日時が記録されていること
- 不貞行為が複数回行われていることがわかること
- ホテルや自宅への出入りの写真の場合には入るところと出るところの両方の写真があること
録音した音声データや録画した撮影データ
あなたの夫や妻と浮気・不倫相手との間での不貞行為をしたことが明らかにわかる音声データや録画された映像データがあれば、証拠として採用される可能性が高いです。
一般的にICレコーダーやビデオやスマートフォンで録音・録画されたものの場合が多くなっています。具体的には次のような内容のものです。
- ①性行為や類似行為の録音・録画データ
- ②あなたの夫や妻や浮気相手の浮気・不倫を認めた内容の録音
- ③浮気・不倫相手との電話の録音
- ④ホテルや不倫相手の自宅から一緒に出てくる動画
- ⑤一緒に旅行に行っていることがわかる動画
これらのデータのポイントは、
- 一緒にいたり、普通の会話をしていたりするというだけのものでなく、不貞行為をしているということがわかる録音や録画データであること
- 著しく違法的な方法で取得されたものでないこと
クレジットカードの利用明細、レシート
クレジットカードの利用明細やレシートが浮気や不倫行為の証拠として採用されることもあります。具体的には次のようなものが挙げられます
- ①ラブホテル、ホテル、旅館などのクレジットカードの利用明細書
- ②ホテル街や相手の家の近くで使われたレシート(コンビニエンスストア、レストラン、その他の店舗)
これらのデータのポイントは次のようなものです。
- 繰り返し使われたものであること
- 不倫行為が単発でなく継続しているということが証明できます。
- 不貞行為があったと連想されるようなものであること
- 避妊具や性行為用のグッズ、異性の下着の購入履歴などがあると証拠として採用されやすいです。
Suica、PASMOなどの利用履歴
電車や自動車の移動履歴も不倫行為の証拠として認められることがあります。
- ①Suica、PASMOの利用履歴
- Suica、PASMOは駅の券売機などで利用履歴を確認し、印字することができます。これが、あなたの夫や妻の移動履歴の証拠となることがあります。
- ②自動車のETC利用履歴
- ETC利用サービスのホームページ(https://www.etc-meisai.jp/)で過去の利用履歴を照会・印刷することができます。
データのポイントは次のようなものです。
- 継続的に使われたものであること
- 1回だけの履歴ではたまたま出かけただけという主張が通る可能性があり、何度も使われたという履歴があるほうが望ましいです。
- 他の証拠と連動していること
- これらの証拠単発では証拠として弱いので、ホテルや旅館の利用明細やその他の証拠と連動して不倫行為の証拠として採用されることが多いです。
メール、LINEや手紙
メールやLINEの文面は浮気や不貞行為の証拠として採用される可能性があります。特にメールは裁判で提出されることがとても多い証拠です。具体的には次のようなものです
- ①あなたの夫や妻が不倫や浮気相手に送ったメールや逆に不倫や浮気相手があなたの夫や妻に送ったメールのコピー、文面を撮影した写真
- ②LINEの文面(スクリーンショットではなく写真で撮影した者のほうが良い)
- ③手紙、年賀状など
Twitter, FacebookなどのDMも同じように証拠となる可能性があります。
注意する点は次の通りです。
- 肉体関係があったことが分かる内容であること
- 親密な関係があるということだけではなく、肉体関係があることを推測されるような内容であることが必要です。
- 複数回のやりとりがあること
- 継続的にやり取りがされているのでなければ、関係が継続しているという証明がしにくくなります。
- メールの場合は日時がはっきりしていること
- 夫婦関係がどのような状態の時期に不貞行為をしていたかの判断をするのにメールのやり取りの時期が重要です。
SNSやブログ
最近はSNSやブログをやっている人も多いため、これらが不貞行為の証拠として採用されることもあります。具体的には次のようなものです。
- ①FacebookやInstagramに投稿されたツーショット写真
- ②ブログにアップされたツーショット写真や不貞行為があったと思われるような記事
- ③Twitter, Facebook, InstagramのDMのコピーや写真に撮影したもの
ただし、SNSの場合はアカウントが明らかである必要があります。また、内容的にはメール、手紙で説明したのと同様の内容である必要があります。
手帳、日記、メモ
紙媒体でも次のようなものの場合、証拠として採用されることがあります。
- ①手帳やスマホのスケジュールアプリで浮気や不倫相手と会った記録
- ②浮気や不倫相手と会ったことがわかる日記
- ③メモ、付箋、名刺などに書かれた私的な電話番号やメールアドレスなど
これらが証拠として採用されるためのポイントは次のようなことです。
- 日時や場所などが明らかで、不貞行為が行われたことが推測できるようなものであること
- 日時や場所が明確でないものは証拠として認められにくいです。
- 手帳や日記の場合、継続的に記録されていること
- 単発である場合、信ぴょう性に欠けると判断されることがあります。
GPS
GPSを使って収集したデータも証拠として採用されることがあります。具体的には夫や妻のカバンなどにGPSを入れて、行動を記録し、ホテルや旅館、相手の自宅などに行ったことを情報として収集したデータのことです。
ただし、プライバシーを侵害したものとされることもあるので、注意が必要です。
興信所や探偵社の報告書
更新所や探偵社に依頼して作成してもらった報告書も不貞行為を証明する証拠として採用されることが多いです。
ポイントは信頼できる興信所、探偵社に依頼することです。
- 不貞行為を立証する証拠の集め方
- 次にこれらの不貞行為を立証する証拠はどのように集めるのかを考えます。
不定行為を立証する証拠の集め方としては自分で集める方法と興信所や探偵社に集めてもらう方法があります。
自分で集める方法
「興信所や探偵社に依頼するとしても、費用がいくらかかるかわからないし、自分でできることは自分でやってしまおう。」ということで、これまでに上げてきた証拠になるものを自分で集めることもできます。
- 自分で証拠を集め易いもの
- メールやLINEのデータや写真を撮影するなどしての収集及びPCに残っているメールや写真のデータなどは、一緒に生活をしている場合、自分で集めやすいと考えられます。また、相手が無造作に捨てているなどした場合にはレシートや領収書なども集めやすいでしょう。SNSやブログは自分で調べられる可能性が高いものと言えます。逆にホテルや相手の自宅への出入りの写真などは難易度が高く自分で集めることは難しいと思われます。
- 自分で証拠を集める際の注意点
- 自分で情報を収集する場合、逆に夫や妻に知られる可能性があります。そうすると警戒を強め、情報を収集できなくなったり、関係をさっさと清算したりして、結局、追及できなくなる可能性があります。
- また、証拠として採用されるために必要な条件を十分に分かっていないために、いろいろなものを集めたはいいが、どれも証拠として使えないものである可能性もあります。
興信所や探偵社に依頼する方法
ホテルや相手の自宅への出入りの写真などについては、相当な技術や経験を必要としますので、興信所や探偵社に依頼するほうが収集しやすいでしょう。ただし、注意点がいくつかあります。
興信所や探偵社に依頼する場合の注意点
- 料金
- 調査員の数や調査の方法にもよりますが、だいたい1時間2万円程度と考えておくとよいでしょう。きちんと報告書を作成してもらって充分な証拠を確保してもらう場合、結局10万円~30万円程度はかかると思っておいたほうがいいでしょう。
- 登録がされているかどうか
- 素行調査等を行う事業者は探偵業法という法律で管理されていますので、ちゃんと登録されているかどうかの確認をしましょう。
まとめ
不定行為を立証するために必要な証拠とその集め方について説明してきました。ポイントは次のようなことです。
- 夫や妻の不貞行為が疑われる場合は、まず冷静に証拠となるものを集めること
- 法律上証拠となるのは「肉体関係」があったことを示す証拠
- 自分で集めるなら、リスクに注意
- 興信所、探偵社は法律をも守って、費用が明瞭なところに依頼すること