無料法律相談実施中

 06-4394-7790

土日祝・夜間も対応

24時間
メール受付中

一度食事に一緒しただけで慰謝料請求されました

結婚相手とは別の異性と一度食事に行っただけで慰謝料請求をされることはあるのでしょうか。
この問題について考えるためには、「どのような場合に慰謝料請求が認められるのか」について過去の判例から分析したり、法律上「不倫」「不貞行為」とは何を意味するのかを考えたりする必要があります。

既婚男性(女性)と食事にいくのも不倫?

「不倫」「不貞行為」とは何を意味するのでしょうか。
国語辞典をひくと、「男女が超えてはいけない一線を越えて関係を持つこと」「配偶者以外の異性と関係を持つこと」などと記載されています。

離婚における「不倫」とは、法律上、離婚原因としての意味を持ちます。
民法には、離婚原因が5つ規定されており、①不貞行為、②悪意の遺棄、③3年上の生死不明、④回復の見込みのない強度の精神病、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があります(民法770条1項各号)。
「不倫」は、その5つのうちの「不貞行為」に当たる可能性があります。

日本では、婚姻制度として一夫一妻制を採用しており、その本質は夫婦の排他的な性的関係にあるとされています。
そのため、不貞行為は、婚姻制度の根幹にかかわる行為であるとして、離婚原因の一つとされました。

「不貞行為」の意義としては、単に配偶者以外の異性と肉体関係を持つことにとどまらず、相手方の合意のない肉体関係も含まれます。

そのため、単に既婚男性(女性)と食事に行ったとしても、一般的な感覚として不倫だと感じる方はいらっしゃるかもしれませんが、法律上は「不貞な行為」(770条1項1号)にはあたらないといえます。

したがって、既婚男性(女性)と食事に行くような行為は、法律上は「不倫」とはいえません。

肉体関係がなくても慰謝料請求されるケース

既に述べたように、肉体関係のない、「いわゆる不倫関係」が存在するにとどまる場合には、民法上の離婚原因である「不貞な行為」(770条1項1号)には該当しません。
民法上の「不貞な行為」とは、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことを意味するため、肉体関係の有無は決定的な要素といえるからです。

離婚に伴う慰謝料を請求するにあたっては、770条1項各号の離婚原因に該当する必要がありますが、肉体関係の伴わない「いわゆる不倫関係」については、離婚原因に該当しないため、原則として離婚に伴う慰謝料請求は認められないということになります。

しかし、慰謝料請求は、離婚に伴うものに限られません。

慰謝料請求の法的根拠は、民法709条であり、民法709条に基づく慰謝料請求が認められるためには、①権利の侵害、②損害の発生、③行為と損害の間の因果関係、④故意・過失が認められる必要があります。

したがって、行った行為が既婚男性(女性)と食事に行くような行為であったとしても、夫婦関係が破綻し、それによって精神的な苦痛を被り、その行為によって夫婦関係が破綻して苦痛を被ったといえ、その行為を、相手に家庭があること等を知ってしたことが認められれば、慰謝料請求が認められることになります。

もっとも、これは理論上の話であり、やはり肉体関係がない以上、婚姻関係に対する侵害の程度は不貞行為に比べて軽微であるといわざるを得ず、認められたとしても少額になる傾向があります。
また、肉体関係が存在するのであれば、不貞行為の現場を直接的に記録した証拠が存在すれば、請求が認められるのは決定的といえますが、そのような関係がない以上、直接的な証拠を集めにくく、やはり請求自体が認められにくい傾向にあるといえるでしょう。

不貞行為がなくても慰謝料が認められた判例

たしかに、単に結婚相手とは別の異性と食事に行くような行為をしたにとどまる場合には、離婚に伴う慰謝料請求は認められにくいといえます。
しかし、結婚相手とは別の異性と肉体関係を持つことを意味する「不貞な行為」を行っていなくとも、慰謝料請求が認められた判例も実際に存在します。

〈東京地方裁判所平成25年4月19日平成23(ワ)39342号〉

事案:
原告(以下、X)とAは結婚していた。
被告(以下、Y)は、以前、Aとの間で不貞行為を行い、Xはこのことを知ったため、Yと協議の末、「YがXに対し慰謝料80万円を分割して支払う」という旨の公正証書を作成し、Yはその文書に従って、支払いを終えた。
その後、Aは地方で1週間ほど仕事をし、Xに対しては帰宅日を偽って、Yとある温泉施設で密会をした。
なお、その温泉施設は、いわゆるスーパー銭湯であり、不貞行為を行えるような設備はなかった。
そして、Aは自宅を出て、ホテルに宿泊するようになり、飲食店でYと密会をした。
その後、XとAは協議離婚をし、離婚届を提出した。
Xは、Yに対して、Yの行為によってAとの婚姻関係を破綻の危機にさらされ、多大な精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求をした。

争点①:YはAと不貞行為を行ったか否か

Yの供述によると、Yは必ずしもAとの面会に積極的であったわけではなく、Xとの離婚について思い悩んでいたAの窮状を見かね、Aの求めに応じてやむを得ず面会したものであると認められることや、その他の事実から、たしかにAは帰宅予定日を偽ってYと面会した事実やかつて不貞関係にあった事実をもって、YとAが不貞行為を行ったとはいえない。

争点②:YとAの密会は、Xに対する不法行為にあたるか

XとAが以前公正証書を作成したことは、再びXとAの婚姻関係を破綻に至らせるような行為をしないことを当然の前提として作成されたものである。
それにもかかわらず、Aと面会するような行為を行うことは、YとAが再び不貞関係を差異化したのではないかとの疑いを抱かせる行為であるといえ、XとAの婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある行為であると認められるから、不法行為に当たる。

結論:
裁判所は、YとAが不貞行為をしたとは認めなかった。
しかし、不法行為に該当するとして、慰謝料請求を認めた。

このように、たとえ肉体関係がなかったとしても、慰謝料請求が認められる場合があります。

慰謝料請求された際の今後の対応

相手から慰謝料請求をされた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
慰謝料請求をされるような場合には、まず、内容証明郵便で慰謝料請求をされるのが通常です。
内容証明郵便自体に法的な強制力はありませんが、それだけで終わるということはなく、訴訟手続きに移行していくつもりであるということを伝えてきているという意味があります。
そのため、意地を張って無視をしていると、相手が訴訟を提起してしまい、訴状が届いてしまいます。
その時点でさらに無視をしてしまうと敗訴してしまいます。
また、仮に指定された期日に裁判所に出向いたとしても、確かに弁護士でなくとも訴訟手続きを行うことはできますが、弁護士の助けなしに訴訟を追行するのはかなり難しいといえます。
なるべく早く弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

まとめ

肉体関係のない「いわゆる不倫関係」は、たしかに「不貞な行為」(770条1項1号)には当たらず、慰謝料請求は認められにくいといえるでしょう。
しかし、判例の中には慰謝料請求が認められているものもあります。
弁護士に依頼し、適切な対応をとることが重要です。