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15年前の不貞行為が発覚、慰謝料請求は可能ですか?

離婚が成立した後、15年前の不貞行為(不倫など、一方の配偶者が異性と性行為を伴う交際を行うこと)が発覚した場合、これを理由に不貞配偶者や不倫相手に対して慰謝料請求をすることができるのでしょうか。

ここでは、慰謝料請求の時効や、慰謝料の相場、相手の居場所の突き止める方法などについて解説していきます。

慰謝料請求の時効

慰謝料請求の法律上の根拠としては、民法710条によることになります。
そしてこの慰謝料請求権には、消滅時効が定められています(724条、改正民法724条各号)。
つまり、「特定の期間」内に慰謝料の支払いを請求しないと、その請求権は消えてしまいます。
民法はこの「特定の期間」として、「3年の場合」と「20年の場合」を定めています。

なお、平成29年に民法が改正し、この改正民法は2020年(令和2年)4月1日に施行されます。

3年の場合

上記の消滅時効の規定は、まず「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間」と定めています(724条前段、改正民法724条1号)。
つまり、慰謝料請求を考えている人が、不貞行為及び不倫した者(不貞配偶者・不倫相手)を知った時から3年が経ったときに、その慰謝料請求権は時効により消滅します。

慰謝料請求権は「不貞行為」と「不倫した者」の両方を知らなければ消滅時効にかかりません。
そのため、(元)配偶者(不貞配偶者)に対して慰謝料を請求する場合でも不貞行為があったことを知らなければ、その慰謝料請求権は消滅時効にかかりません。
また、不倫相手との関係では、不貞配偶者が不貞行為をしたことは知っていたが、不倫相手が分からない場合、その不倫相手に対する慰謝料請求権は消滅時効にかかりません。

ただし、不貞配偶者が別居しており、異性と同棲していたようなケースでは、「一方の配偶者が右の同せい関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行する」とされているため(最判平成6年1月20日判時1503号75頁)、上記「不貞行為」を知らなくても、同棲を知ったときから消滅時効が進行します。

20年の場合

また、上記消滅時効の規定には「不法行為の時から20年」と定めています(724条後段、改正民法724条2号)。
すなわち、たとえ不貞行為と不倫した相手を知らなくても、不貞行為が行われてから20年が経過すれば、慰謝料請求権は自動的に消滅します。
今回問題となっているのは「15年前の不貞行為」であるため、まだ慰謝料請求権は消滅していないといえるでしょう。

なお、改正民法724条2号の規定は除斥期間ではなく、消滅時効期間とされています(同条柱書参照)。

時効の中断(更新)が起きる場合

このように慰謝料請求権には消滅時効があるため、上記消滅時効期間の間に慰謝料を求める必要があります。
例えば、消滅時効が完成するまで時間がないが、忙しくて請求する余裕がないなどのようなこともあるでしょう。
このような場合は、「時効の中断」(改正民法では、「時効の更新」)を行うことが考えられます。

「時効の中断(更新)」とは、「特定の行為」を行うことでそれまで進行していた時効期間を無意味にし、時効期間のカウントが新たに始まることをいいます。
つまり、例えば、不貞行為及び不倫した者(不貞配偶者・不倫相手)を知った時から、既に2年6ヵ月が経過している場合でも、「特定の行為」を行うことで、「特定の行為」が終わってから新たに3年間は消滅時効にかからない、ということです。

この「特定の行為」には、次のものがあります(民法147条)。

  • 裁判上の請求
  • 差押え、仮差押え又は仮処分
  • 承認

※なお、改正民法下では、「特定の行為」には次のものがあります(改正民法147条1項、148条1項)。

①裁判上の請求等による時効の完成猶予・更新
  • 裁判上の請求
  • 支払督促
  • 民事訴訟法上の和解または民事調停法・家事事件手続法による調停
  • 破産手続き参加、再生手続き参加または更生手続き参加
②強制執行等による時効の完成猶予・更新
  • 強制執行
  • 担保権の実行
  • 民事執行法の定めによった競売
  • 民事執行法上の財産開示手続き

慰謝料の相場はいくらになるか?

慰謝料の額はケースによって大きく異なり、様々な事情を考慮して具体的に決めていくことになります。
そのため、「慰謝料は○○円請求できる」と指摘するのは、なかなか難しいといえます。

とはいえ、慰謝料の相場もあることにはあり、今回のような「不貞行為(不倫行為)」が問題となっているケースでは、不貞配偶者との関係では、おおよそ100~500万円が相場とされています(しかし、「15年前の不貞行為が発覚」ということは、その不貞行為が直接の離婚原因となったわけではなく、また15年前の行為を問題にするということになると損害額の認定はかなり難しくなるでしょう。
ケースによっては慰謝料請求をすること自体が権利濫用にあたると判断されることもあるのではないでしょうか。
そのため、慰謝料は認められないか、認められたとしても上記の相場よりかなり低くなる可能性があります)。

また、不倫相手との関係では、おおよそ100万円~300万円の慰謝料額が認められることが多いとされていますが、もっと少ないケースも考えられます(今回のケースで不倫相手に対する慰謝料請求はそもそも認められないのではないでしょうか。
不倫相手に対する慰謝料請求は一般的に認められますが(最判昭和54年3月30日民集33巻2号303頁)、これはその不倫相手の行為が「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益を侵害する」ためで、既に婚姻関係が破綻している場合は、原則として不倫相手に対する慰謝料は認められないとされます(最判平成8年3月26日民集50巻4号993頁)。
15年前の不倫相手の行為が「婚姻共同生活の平和の維持という権利ないし法的保護に値する利益を侵害」したと考えるのはかなり無理があるので、不倫相手の行為と損害の因果関係がそもそも認められない可能性があります。)。

繰り返しになりますが、上記の慰謝料額は、あくまで目安であり、目安通りにならないケースも多々あります。
どれくらいの額になるかは、弁護士に相談する際に聞いてみるとよいでしょう。

相手の居場所を突き止める方法

不貞配偶者や不倫相手に対して、慰謝料請求を行う場合は、相手がどこにいるのかを突き止めなければ逃げられてしまう可能性があります。

このため、相手の居場所を突き止めなければなりませんが、その方法としては、例えば探偵や興信所に依頼することなどが考えられます。
自分で調べるというのは時間的・金銭的余裕がある方でもかなり大変であるため、ここは調査のプロに任せた方がよいでしょう。

ただし、今回のケースは15年前のものであるため、特に不倫相手を一から調査するというのはかなり困難といえます。
相手の名前や容姿の特徴、職業などある程度の情報がなければ依頼を受けてもらえない可能性があります。

まとめ

以上のように、既に離婚が成立している場合に、15年前の不貞行為に対する慰謝料請求はかなり難しいといえます。
それでもどうしても慰謝料を求めたいというのであれば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。